桃山ビート・トライブ
著者:天野 純希
「このところ、都近くのあちこちの村で、祭り荒らしってのが出るらしいですよ」
「なんだ、それは。新種の妖怪か?」
「違いますよ。なんでも、呼ばれもしないのに村人が集まっているところに乱入して、勝手に演奏をはじめる芸人の一座だそうです」
時は安土桃山時代。三味線弾きの藤次郎、笛役者の小平太、太鼓叩きの黒人弥介、踊りの天才ちほの4人が組んでゲリラライブを行っていた。
私が大好きな作家"花村萬月"のデビューのきっかけになった小説すばる新人賞の第20回(2007年)受賞作品。
立って三味線を弾くと言う革命的な奏法を生み出した藤次郎や、アフリカンビートで観客をのせる弥介、影が薄い小平太、大食い・大酒のみのダンサーちほと、個性的な登場人物たち。
安土桃山時代にロックを持ち込んだその設定と、勢いでガシガシと読ませてくれるエンタテイメント。
文章は粗いが、次作以降も期待できそう。