奇偶

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 著者:山口雅也
山口雅也が本格推理小説のタブーである「偶然」に真っ向から挑む。

主人公である作家「火渡雅」の周りで起きる不可解な偶然の連鎖。
偶然起きた事件には必ずゾロ目のダイスが関連し、人物の名前は易経と関連する。
主人公と友人の精神科医が事件の背景を推理していくが、どうしても偶然性を排除することができない。

推理小説のスタイルを取りながらも事件の解決はそっちのけで偶然を俎上に載せ、物理学・数学・神学・哲学・文学・民俗学・心理学・易経などあらゆる分野からの検討がなされる。
ともすれば、読者の人間としての存在意義さえも揺らがせる力作。
屁理屈好きにはたまらない一冊。

とにかく引用されるエピソード、理論が多い。
ユングがシンクロニシティ現象を着想するきっかけになった「四月の魚」の偶然に始まり、アインシュタインの不確定性原理、シュレディンガーの猫、確率論の大数の法則、南方熊楠の「因果」「縁起」に関する考察、ポール・ディラックの「人間原理宇宙論」、ボーアのERP思考実験、ボームの内蔵秩序、ユングの因果的本能
これらと古代中国の易経の思想を絡ませながら進む後半の解決編は圧巻です。

欲を言えば最新のカオス理論も絡ませてほしかった(^^;;;

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