DDD(1)(2)
著者:奈須きのこ
イラスト:こやまひろかず
講談社BOX/講談社
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買いました〜。
「────、ぁ」
その左腕が、痛かった。
ゴリゴリという音が聞こえる。
全身が削られていく悪寒。
全体が咀嚼されていく快感。
自分が、淡々と食われていく実感。
左腕が消え去り、ようやく自由を取り戻す。暗闇で、まだハラハラと啜り音がする。毛布をはぐ。
ベッドの上は一面の赤。鼻から下を真っ赤に染めた少女が、砕けたアゴで微笑んでいた。
『──だって、お兄ちゃん苦しいでしょう?』
少女は、何かよくないモノに憑かれている。
ペロリと平らげた左腕。痛みもなく、噛痕もない。少女は砕けたアゴで断面を舐める。喪われた者、大きな隙間を埋めるように。
それは骨の軋む幽かな夜。
花開くような、美しい命の音。
凄いです! とにかく引き込まれます。
いや〜、さすが奈須きのこ先生と言ったところでしょうかねー。
同人ゲームを一躍有名にしたアダルト伝奇ストーリー『月姫』の時もそうでした…
私を殺した責任、とってもらうからね
この一言にやられた!
心を鷲掴まれたとハッキリ自覚できる程につかみ十分であったのを今でも憶えています。
そして、今回ご紹介する『DDD』もそんな感じ…。
読み始めて一番最初に目に入る上にご紹介した文章の部分だけですっかり掴まれてしまいました。
もう、妹に何をされたのかと?
この、グロでホラーなのに美しく描写されているシーンは何なのかと?
いやいや、ホント流石であります。
さて、そんな『DDD』。奈須先生おなじみの伝奇モノになります。
「空の境界」「月姫」「Fate/stay night」なんかは全部ひとつの世界観で描かれているようでしたが、今回は完全に別作品にしたのかな?
それ故、魔法のようなものは登場致しません。代わりに登場するのが感染性の精神病。
「アゴニスト異常症(A異常症)」
精神病の一種でありながら能力の欠損(患部)を補うため肉体をも変貌(新部)させ、病んだ心のままに快楽殺人者を作り上げる恐ろしい病気。
そのあまりの変わりよう故に世間では『悪魔憑き』とも呼ばれ、感染が確認された者はオリガ記念病院に治療という名で収容されます。
ちなみに『DDD』とは、Decoration Disorder Disconnectionの略。
なかなかこのA異常症を上手に表しているな〜と思います。
ジャンル的には一応ミステリーなのかな〜。
ホラーというか、伝奇というのが一番しっくり来ますけどね。
ミステリーとしての期待を込めて読むと、多分イマイチな結果に終わってしまうのではないかと思うのでオススメできません。
ぶっちゃけ、読者を騙すトリックは全話同じですしね。
あと、前述の「空の境界」「月姫」「Fate/stay night」なんかを読んだりプレイした経験のある方々であれば想像が付くかと思いますが、
相変わらずキャラクターの魅力には素晴らしいものがあります!
この部分は期待しても裏切られないと思っていいんじゃないかなぁ〜〜〜。
個人的には
「マトさんカッコエェ!」 と 「ツラヌイサイコー!」
とまあこんな感じ…わけわからんですね。
でも、ツラヌイちゃんはいいです!
戯言シリーズの葵井巫女子ちゃん以来の Hit キャラといっても過言ではないでしょう。
…尚更わけわからんですね、ごめんなさい。
本心から言えばキャラも色々と紹介したいところではあるのですが、何せ美味しいキャラが集まりまくっているだけに何を書いてもネタバレになりそうで書けません。
なので、興味の沸いた方は是非お手にとってお確かめください。
どうも作者的には全体のプロットが終了しているのか、一連の大きな出来事の要所要所を話として描いていっているような物語の進み方。
それ故、時系列的に多少混乱しやすいものがありますが、親切にも1巻の巻末に簡単な年表が付いていますので読み終わったらそちらで確認しましょう。
某雑誌のインタビューでは全3巻。その後、ご自身のHPで全4巻になると発表のあったこの作品。
(2巻のラストまでを読むと、3巻で終わりじゃないの??? という気もする展開ですが、やっぱあの部分とかで4巻に伸ばすのだろうなぁ〜)
何はともあれ、最後まで書いてくれることを願わずにおれません。
肉体変貌を招き、快楽殺人者を生み出す恐怖の病気
病気により生み出される悪魔憑き
悪魔だけが住むという謎の閉鎖された団地
悪魔憑きにより“最速”となった怪人
悪魔憑きを上回る暴力刑事
悪魔憑きを偽者と呼ぶ、地下室の本物の悪魔
悪魔によって与えられた力で悪魔払いをする男
そして…….絶対無敵の超人“妹”
こんな言葉に、何やらワクワクするものを感じる方。
是非、御一読してみてください〜。