「死ぬだとか、生きるだとか、それが長かったとか、短かったとか、そういう結果のために山に行くんじゃない。」
エヴェレスト登山に失敗したカメラマン深町が、カトマンドゥの猥雑な街角で偶然手にしたマロリーのカメラ。
マロリーがエヴェレスト初登頂を遂げた証拠が残っているかもしれないそのカメラを調べていくうちに冬期エヴェレスト南西壁無酸素単独登頂を決行しようとしている羽生丈二に巡りあう。
羽生を追い、深町も冬期のエヴェレストに挑む。
あとがきで獏さんも言及していますが、これは羽生と深町と言う男がエヴェレストに挑む直球ド真ん中の話です。
獏さんの骨太の文体で描かれる圧倒的に濃いエヴェレスト登山。
深町が拘ったマロリーのカメラに関する謎は置いてけぼりです。
羽生が若いときに失敗したグランドジョラスでの手記や、エヴェレスト単独登頂時の手記は鬼気迫るものがあります。
山しかない男の情念を描いた渾身の一作。
山屋必読。