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黒猫館の殺人

黒猫館の殺人 (講談社文庫)黒猫館の殺人
 著者:綾辻 行人

「いいねえ、北海道は」
「梅雨が無いのも台風が来ないのも確かにいいけどね、問題の核心はなによりもまず、あいつらがいないことだ」
「あいつら?何ですか、それ」
「ゴキブリに決まってるだろう」

ホテル火災に巻き込まれ、記憶をなくした男。
彼が火災現場から持ち出した手記には、中村青児の設計した館"黒猫館"で起こった事件が綴られていた。
鹿谷は、どこにあるとも知れない黒猫館を探し、彼の記憶を取り戻すことができるのか?

館シリーズ6作目。トリックのスケールは大きいけどうーん。
はじめにトリックありきで物語を作った感満点ですね。
叙述トリックと言うよりは間違い探し感の高い小ネタ満載です。

時計館の殺人

時計館の殺人 (講談社文庫)時計館の殺人
 著者:綾辻 行人

「"現実"という名の巨大幻想を造り出し、これを確かな基本として万人に認めさせ、信じさせるような圧力を加え続けることが、この社会と言うものの最大の役割なんだと思う。そうすることによって初めて、人々に安定が供給されるわけだ。」

鎌倉の郊外に立つ時計館。その館は当時の当主がコレクションした108もの時計で埋め尽くされている。
幽霊が現れるという噂があるその館に取材のために訪れた雑誌「CHAOS」の編集者と霊能力者、W****大の超常現象研究会(ミステリ研)のメンバ達。
10年前に時計館で起こった痛ましい事故と、彼らを襲う連続殺人との関係とは?

館シリーズ5作目。場を支配する大掛かりなメイントリックを擁する閉ざされた館モノ。
事件が起こっている館内と、事件を知らずに他の謎を追っている館外の探偵役。
構図は氏のデビュー作「十角館の殺人」と全く同じですね。
解決後、真相がひっくりかえる所は流石ですが

人形館の殺人

人形館の殺人 (講談社文庫)人形館の殺人
 著者:綾辻 行人

「あれから何度も思い出そうとしてみたんですけどね、どうしても、うまく見えてこないんです。遠すぎて手が届かない—それに何か、形の違う破片がたくさん混ざりこんだパズルみたいな感じで・・・。」

飛龍想一が亡くなった父から相続した京都の邸「人形館」。
近所では子供を対象にした通り魔殺人が横行し、邸の中には父の残したマネキンが
そして、想一の近辺にも彼を狙う正体不明の殺人者が現れる。
館シリーズの4作目。

館シリーズを3作目まで読み続けてきた中で、これが一番面白かったです。
メイントリックと犯人は、ある程度早い段階で分かってしまいますが、それでもなお面白い。
ラストのカタルシスは一番ではないでしょうか?

今までの館シリーズとは、かなり異色な作品ですが、これは良いですよ。
ただし、他の館シリーズを読まずに、いきなりコレを読むとカタルシスが少ないので、注意が必要。

迷路館の殺人

迷路館の殺人 (講談社文庫)迷路館の殺人
 著者:綾辻 行人

「いわゆる作品の完成度だとか、売れる売れないとか、そんなのは極端に云ってしまえば、私にとってはどうでもいいことなんです。こんなトリックは実現不可能だとか、警察の捜査方法の記述が実際と違うとかね、細かい作品のキズをあげつらうような評価の仕方もうんざりです。肝心なのは、正にその、何か過剰なものにどれだけ私の心が共鳴するかということ」

中村青児設計の迷路館で実際に起こった殺人事件を元に"鹿谷門実"という作家が書いたミステリという形式で描かれる館シリーズ3作目。
本格ミステリの巨匠"宮垣葉太郎"の還暦祝いに集まった4人の推理作家と、編集者・書評家・本格マニア。
外界から遮断された館の中で彼らを襲う惨劇。

作中作に目次や"あとがき"、扉や奥付まで付けてしまう懲りよう。
作者が相当楽しみながら作った作品ですね。
読んでるほうも、作品世界に引き込まれてしまいます。

エピローグでのどんでん返しは、小気味良かった。

水車館の殺人

水車館の殺人 (講談社文庫)水車館の殺人
 著者:綾辻 行人

「何て云うか、しっくりしないんですねぇ。
 常々僕は考えているんですけど、物事っていうのは、どんなものであれ、一種ジグソー・パズルみたいな性格がある。それはいくつものピースの組み合わせによって構成された立体的なパズルで、その構成の仕方によって幾通りもの絵柄—というよりも"形"を持つようになるわけで。早い話が、去年の事件について警察が構成した"形"を見てると—、違うんだなあ。どこか間違ってる。どこか、ぎくしゃくしてるんですよね。だから・・・」

崖崩れにより外部から隔絶された館、幽閉された美少女、仮面の当主。
1年前の殺人事件と現在進行中の事件が交互に語られる。
異能の建築家"中村青司"が設計した屋敷を舞台にした館シリーズの2作目。

十角館の殺人が思いのほかヒットしてしまって次作を熱望された感が滲み出てますね。
もうちょっと練りこめばスゴイ作品になっていたかも。
幽閉された美少女、仮面の当主といった幻想的な雰囲気は良いです。

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深泥丘奇談

深泥丘奇談 (幽BOOKS)深泥丘奇談
 著者:綾辻 行人

この世には不思議なことなど何もない—とは、おそらく今この国でもっとも有名な古本屋の決め台詞だが、本当にそうだろうか、と近頃しばしば思うようになった。

晩春の黄昏時、語り手である作家が眩暈を覚えて入った深泥丘病院。そこで出逢った医師・石倉(一)〜(三)と看護師・咲谷。
語り手と彼らとの間に起きた不思議な出来事をつづる連作短編集。


  • 精密検査のため、短期入院した病院内で奇怪なモノを目撃する
  • 丘の向こう
    深泥丘の向こう側、語り手が知らなかった"Q電鉄の如呂塚線"を走る奇怪なモノ
  • 長びく雨
    長雨が続くと良くない事が起こる
  • 悪霊憑き
    ソトト・ダゴンなど、クトゥルー神話っぽいフレーズが散りばめられた本格推理
  • サムザムシ
    歯科治療に対する生理的恐怖
  • 開けるな
    最後のドンデンが楽しい
  • 六山の夜
    五山の送り火を舞台にした幻想の夜
  • 深泥丘魔術団
    秋祭りの夜に病院で開催される奇術ショー

  • 自宅周辺に出没する謎の生き物

強烈に怖いホラーではありませんが、どれも雰囲気があって良いです。
クトゥルー神話や、ドグラ・マグラ好きにはオススメできるかな。

十角館の殺人

十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫 あ 52-14)十角館の殺人 新装改訂版
 著者:綾辻行人

「僕にとってミステリとは、あくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説と言う形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理のゲーム。
それ以上でも以下でも無い。

大分県のS半島J崎の沖合い5kmの海上に浮かぶ孤島・角島。
その島に建つ十角形の奇妙な館<十角館>を訪れたK大学ミステリ研の7人。
半年前、角島に青屋敷と十角館を建て、暮らしていた建築家・中村青司と家族は、青屋敷とともに焼死していた。
青屋敷の事件とリンクするかのように殺害されていく学生達。
ミステリ研の学生達は犯人を特定することができるのか?

20年前に発売され、新本格ブームを巻き起こした綾辻行人の「十角館の殺人」の新装改訂版です。
本土との連絡手段を絶たれた孤島と、本土での同時進行で進む事件。
半年前に惨劇が起こった孤島を舞台に犯行を行わなければならなかった犯人の動機とトリック。
さすが、新本格ムーヴメントを起こした作品だけありますね。

本格好きは、一度は読んでおきたい一作。