比較的新作」カテゴリーアーカイブ

桃山ビート・トライブ

桃山ビート・トライブ桃山ビート・トライブ
 著者:天野 純希

「このところ、都近くのあちこちの村で、祭り荒らしってのが出るらしいですよ」
「なんだ、それは。新種の妖怪か?」
「違いますよ。なんでも、呼ばれもしないのに村人が集まっているところに乱入して、勝手に演奏をはじめる芸人の一座だそうです」

時は安土桃山時代。三味線弾きの藤次郎、笛役者の小平太、太鼓叩きの黒人弥介、踊りの天才ちほの4人が組んでゲリラライブを行っていた。

私が大好きな作家"花村萬月"のデビューのきっかけになった小説すばる新人賞の第20回(2007年)受賞作品。
立って三味線を弾くと言う革命的な奏法を生み出した藤次郎や、アフリカンビートで観客をのせる弥介、影が薄い小平太、大食い・大酒のみのダンサーちほと、個性的な登場人物たち。
安土桃山時代にロックを持ち込んだその設定と、勢いでガシガシと読ませてくれるエンタテイメント。

文章は粗いが、次作以降も期待できそう。

ミノタウロス

51XN4xVEeWL._SL75_.jpgミノタウロス
 著者:佐藤 亜紀

どうせ戦争で死ぬのなら勉強なぞしなくても一緒ではないかと思ったが、伯父の狂信の前では屁理屈に過ぎなかった。
つまり、伯父のスラヴの大儀は、落第生よりは優等生を、病弱な奴よりは身体強健な人間を、次男よりは長男を、子沢山の家の末っ子よりは一人息子を、つまりはより貴重な、より愛される、より有用な人間を犠牲として求めていた。

20世紀初頭、ロシア革命前後のウクライナを舞台に地主の息子ヴァシリが、オーストリア軍の脱走兵ウルリヒを相棒に生き抜くお話。

佐藤亜紀は、某共産国の後ろ盾でN県が日本から独立した世界を描いた戦争の法以来なのですが、良かったです。
戦争の法には、まだロマンがあったり救いがあったりしましたが、この作品には微塵もありませんでしたね。
前半のヴァシリのヘタレっぷりも良いが、後半の小悪党ぶりもたまらない。
しかも、ラストに微塵の救いも無いところが、むしろ清清しくて良いですね。

佐藤賢一の赤目のジャック辺りを好む人にはオススメできるかと。

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深泥丘奇談

深泥丘奇談 (幽BOOKS)深泥丘奇談
 著者:綾辻 行人

この世には不思議なことなど何もない—とは、おそらく今この国でもっとも有名な古本屋の決め台詞だが、本当にそうだろうか、と近頃しばしば思うようになった。

晩春の黄昏時、語り手である作家が眩暈を覚えて入った深泥丘病院。そこで出逢った医師・石倉(一)〜(三)と看護師・咲谷。
語り手と彼らとの間に起きた不思議な出来事をつづる連作短編集。


  • 精密検査のため、短期入院した病院内で奇怪なモノを目撃する
  • 丘の向こう
    深泥丘の向こう側、語り手が知らなかった"Q電鉄の如呂塚線"を走る奇怪なモノ
  • 長びく雨
    長雨が続くと良くない事が起こる
  • 悪霊憑き
    ソトト・ダゴンなど、クトゥルー神話っぽいフレーズが散りばめられた本格推理
  • サムザムシ
    歯科治療に対する生理的恐怖
  • 開けるな
    最後のドンデンが楽しい
  • 六山の夜
    五山の送り火を舞台にした幻想の夜
  • 深泥丘魔術団
    秋祭りの夜に病院で開催される奇術ショー

  • 自宅周辺に出没する謎の生き物

強烈に怖いホラーではありませんが、どれも雰囲気があって良いです。
クトゥルー神話や、ドグラ・マグラ好きにはオススメできるかな。

ZOKUDAM

ZOKUDAMZOKUDAM
 著者:森 博嗣

「違うよぉ。博士は大まかなコンセプトを決めただけで、設計した人間は別にいるし。その人が下請けの工場に部品を発注して、そこの工場でも誰かが設計をして、そのまた下請けに部品を発注して、最後は町工場でおばさんとかおじさんが、旋盤とかプレス機とかを使って、図面どおり、指示どおり、わけもわからず作ったわけよ」

ZOKUDAM が怪獣と対決するために作成している巨大ロボット(と言っても全高はRX-78の2/3程度)「赤い稲妻」と「青い稲妻」。
パイロットとして選ばれたロミ・品川とケン・十河のとりあえずの仕事はマニュアル読みだ。
敵対組織 TAIGON との壮絶な情報戦やら、大雨で地下施設が浸水しそうになったりしながらも物語は TAIGON の操るロボットとの対決に向けてゆるゆると進んでいく。

ZOKUに続く Zシリーズ第2弾。っていうか、登場人物が重複するだけのパラレルワールドモノと思われます。
前作で悪の悪戯組織として活躍した ZOKU のロミ・品川をメインに話が進む。
メインは2つの対立組織によるロボット対決までの道程。
なので、対決した結果は描かれません。あくまでも対決までのお話。
ロボットバトルを期待すると肩透かしを食うので、ご注意。

工学部・水柿助教授シリーズや、森博嗣の工作系エッセイ(工作少年の日々など)が好きな方にオススメ。
お話の性格上、前作を読んでいる必要は全くありません。

ネムルバカ

ネムルバカネムルバカ
著者:石黒正数
RYU COMICS/徳間書店
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買いました〜。

やりたいことのある人とやりたいことのない人の間に
何かしたいけど何が出来るのか分からない人ってカテゴリーがあって
8割方そこに属してると思うんだがね

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誰かがカッコゥと啼く 2 巻

誰かがカッコゥと啼く(2)誰かがカッコゥと啼く(2)
著者:イダ タツヒコ
SUNDAY GX COMICS/小学館
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買いました〜。

せっかく手に入れたオモチャ、
二年もしまったまま出して遊ばないなんて
……オレ、ムリ。

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DDD 1、2 巻

DDD 1DDD 2DDD(1)(2)
著者:奈須きのこ
イラスト:こやまひろかず
講談社BOX/講談社
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買いました〜。

「────、ぁ」
 その左腕が、痛かった。
 ゴリゴリという音が聞こえる。
 全身が削られていく悪寒。
 全体が咀嚼されていく快感。
 自分が、淡々と食われていく実感。
 左腕が消え去り、ようやく自由を取り戻す。暗闇で、まだハラハラと啜り音がする。毛布をはぐ。
ベッドの上は一面の赤。鼻から下を真っ赤に染めた少女が、砕けたアゴで微笑んでいた。

『──だって、お兄ちゃん苦しいでしょう?』

 少女は、何かよくないモノに憑かれている。
 ペロリと平らげた左腕。痛みもなく、噛痕もない。少女は砕けたアゴで断面を舐める。喪われた者、大きな隙間を埋めるように。

 それは骨の軋む幽かな夜。
 花開くような、美しい命の音。

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ゾラ・一撃・さようなら

ゾラ・一撃・さようならゾラ・一撃・さようなら
 著者:森博嗣

愛する人を、私は殺せるだろうか。
できる。
それは・・・・・・・、
愛するからこそ、できる。
これが、愛するという形だから。
私の形だから。

志木真智子からの依頼で、元都知事の法輪精治郎から美術品「天使の演習」を取り戻して欲しいと依頼を受けた探偵頸城悦夫。
一方、法輪精治郎はゾラと言う殺し屋に命を狙われている。

夏のレプリカに登場した盲目の詩人「簑沢素生」や、魔剣天翔などのVシリーズに登場した宝剣「天使の演習(エンジェル・マヌーバ)」が登場することからもわかるとおり、S&Mシリーズ・Vシリーズの外伝的作品。
ちょっとハードボイルド、ちょっとミステリ、ちょっとロマンスの中途半端感がぬぐえない。
オシャレな会話とVシリーズやS&Mシリーズの雰囲気が楽しみたければ読んでみても良いが、森博嗣ファン以外には勧められないかも。