「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」
著者:夢枕獏
飲んだ帰りにボクサー崩れのヤクザに絡まれ土下座をさせられた中年オヤジが一念発起して空手を習い、徐々に強くなっていく話。
弱いのにツレの不倫相手のお姉ちゃんに良いところを見せようとしたり、オヤジの悲哀が滲み出ている良い作品です。
ラスト新宿御苑での決闘シーンは美しいです。
殴り合いをしながら彼我の境界が無くなっていく。
エロティックですらあります。
「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」
著者:夢枕獏
飲んだ帰りにボクサー崩れのヤクザに絡まれ土下座をさせられた中年オヤジが一念発起して空手を習い、徐々に強くなっていく話。
弱いのにツレの不倫相手のお姉ちゃんに良いところを見せようとしたり、オヤジの悲哀が滲み出ている良い作品です。
ラスト新宿御苑での決闘シーンは美しいです。
殴り合いをしながら彼我の境界が無くなっていく。
エロティックですらあります。
傭兵ピエール
著者:佐藤賢一
ジャンヌ・ダルクと彼女を助ける傭兵隊長ピエールの話。泣かせます。
悪辣非道の傭兵隊長ピエールが、憎めないキャラクターとして実に生き生きと描かれています。
脇役達も非常に魅力的。
歴史的な事実であるジャンヌ・ダルクの処刑も見事に処理し、最後の言葉「イエス様、イエス様」にも別の意味を持たせている所は見事としか言いようがありません。
伝奇小説ファンにはたまりませんなぁ。
「嗤う伊右衛門」
著者:京極夏彦
四谷怪談をベースに京極夏彦が描いたラブストーリ。泣かせます。
岩と伊右衛門、どちらも相手の事を想っているのに、ちょっとした行き違いとで2人は別れ、しかしそれでも互いに求め合う。
ラスト伊右衛門と岩の抱き合う骸が登場するシーンの描写は秀逸。
愛憎、美醜、正気と狂気、相反する感情を描いた傑作です。
「三月は深き紅の淵を」
著者:恩田 陸
コピーをとってはいけない、作者を明かさない、友人に貸す場合はたった一人だけで、それも一晩だけ。
さまざまな条件をつけられた「三月は深き紅の淵を」という稀覯本を探す話(待っている人々)、作者を突き止めようとする話(出雲夜想曲)、本が書かれようとしている時の話(虹と雲と鳥と)、本が書かれている最中の話(回転木馬)の4部作で構成されています。
どれも独立した話になっていて、関連は「三月は深き紅の淵を」と言う本だけ。
この「三月は深き紅の淵を」と言う本がなかなか魅力的に書かれています。
私のような活字中毒者には、かなり共感させられる話です。
はっ、もしやこの感情が萌えなのか?
#違いますね 😛
「蠅の女」
著者:牧野 修
廃墟にピクニックに出かけた主人公たちが、カルト教団の秘儀を見てしまい、秘儀により復活した「救世主」に命を狙われる。
主人公たちは対抗策として悪魔「ベルゼブル」(蠅の王)を喚起して戦うと言う話。
救世主に対抗するために蠅の王「ベルゼブル」を呼び出してしまうのは飛躍しすぎか?
しかし「ベルゼブル」がなかなか魅力的なので許そう。
さほど厚くないし、勢いがあるので、オカルト知識なしでもスラスラ読めます。
# ってかオカルトと言っても「ロンギヌスの槍」と聖書の引用があるくらいかな?
船戸さんの小説は、主人公(達)は大抵ラストでは全滅して寂寥感だけが残る終わり方をしてます。
#「兵どもが夢の後」って感じ。それが良い所なんだけどね (^^;;;
でも、この小説では珍しくラストで救いがあります。
アフガン帰還兵がソ連崩壊後のロシアでマフィアとして暗躍。
そこに元 KGB やらロシア民警やらが入り交じって闘争を繰り広る。
しかも信仰のためとか正義のためとかの胡散臭い理由で戦う奴は一人も居なくて、みな金銭のためとかサディズムを満たすためとか、とにかく自らのエゴで容赦なく殺しまくる。
# こう書くと救いがなさそうだなぁ…
船戸さんのねらいは
「ヒットする大衆小説は、革命もしくは戦争と恋が同時に起き、革命もしくは戦争が進化していくと恋も進化していく。
そして最後は革命ないし戦争が遠景として去っていって恋愛だけが残る。それをやろうと思って」
と言うことらしいが、それが見事に成功した感じ。
もちろんお得意の主要人物のあっけない死もあります。
麦酒の家の冒険
著者:西澤 保彦
匠千暁シリーズの中の1作。
舞台は、遭難した主人公達が迷い込んだ無人の別荘。
その別荘には、1台のベッドと冷蔵庫の中の大量の冷えたビールのロング缶とジョッキだけしかない。
誰が何の目的で、このような別荘を用意したのか?
主人公達は置いてあったビールを勝手に呑みながら推理に推理を重ねて、この別荘の謎を解こうとする。
最初は穴だらけだった推測から、最後は事件の真相に届きます。
推理により真相に至る過程だけを楽しみたい方にお薦め。