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迷路館の殺人

迷路館の殺人 (講談社文庫)迷路館の殺人
 著者:綾辻 行人

「いわゆる作品の完成度だとか、売れる売れないとか、そんなのは極端に云ってしまえば、私にとってはどうでもいいことなんです。こんなトリックは実現不可能だとか、警察の捜査方法の記述が実際と違うとかね、細かい作品のキズをあげつらうような評価の仕方もうんざりです。肝心なのは、正にその、何か過剰なものにどれだけ私の心が共鳴するかということ」

中村青児設計の迷路館で実際に起こった殺人事件を元に"鹿谷門実"という作家が書いたミステリという形式で描かれる館シリーズ3作目。
本格ミステリの巨匠"宮垣葉太郎"の還暦祝いに集まった4人の推理作家と、編集者・書評家・本格マニア。
外界から遮断された館の中で彼らを襲う惨劇。

作中作に目次や"あとがき"、扉や奥付まで付けてしまう懲りよう。
作者が相当楽しみながら作った作品ですね。
読んでるほうも、作品世界に引き込まれてしまいます。

エピローグでのどんでん返しは、小気味良かった。

水車館の殺人

水車館の殺人 (講談社文庫)水車館の殺人
 著者:綾辻 行人

「何て云うか、しっくりしないんですねぇ。
 常々僕は考えているんですけど、物事っていうのは、どんなものであれ、一種ジグソー・パズルみたいな性格がある。それはいくつものピースの組み合わせによって構成された立体的なパズルで、その構成の仕方によって幾通りもの絵柄—というよりも"形"を持つようになるわけで。早い話が、去年の事件について警察が構成した"形"を見てると—、違うんだなあ。どこか間違ってる。どこか、ぎくしゃくしてるんですよね。だから・・・」

崖崩れにより外部から隔絶された館、幽閉された美少女、仮面の当主。
1年前の殺人事件と現在進行中の事件が交互に語られる。
異能の建築家"中村青司"が設計した屋敷を舞台にした館シリーズの2作目。

十角館の殺人が思いのほかヒットしてしまって次作を熱望された感が滲み出てますね。
もうちょっと練りこめばスゴイ作品になっていたかも。
幽閉された美少女、仮面の当主といった幻想的な雰囲気は良いです。

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もえない?Incombustibles

もえない?Incombustiblesもえない?Incombustibles
 著者:森 博嗣

「簡単ではないよ」刑事は微笑んだ。「人を殺すことが、簡単であってはいけない」
あってはいけない、というのは、警察としての立場上の希望だろうか。僕は、むしろ簡単なんだな、という印象を持った。一人の人間が自分だけで考えて、簡単に実行してしまえることなのだ。

死んだクラスメイトの父親から届けられた、僕の名前が掘り込まれた金属片。父親の話では彼の遺品から出てきたものだという。
死んだ彼が残した金属片の意味とは?
不確かな記憶を抱えたまま、不可解な事件に巻き込まれていく僕。

面白かったです。主人公達が妙に爽やかなところも良いですね。
トリックや動機を追及する型のミステリではありません。

森博嗣ファンならオススメ。

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身容疑者Xの献身
 著者:東野圭吾

「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけだ、ということをいいたかったんだ」

ある母娘が犯した殺人事件。
その母娘の隣人である天才数学者石神は彼女達を守るため、完全犯罪をもくろむ。
石神の同窓生でもある湯川は果たして真実に迫れるか?

探偵ガリレオシリーズの湯川助教授が活躍する長編。
犯人と犯行現場は最初に開示されているため、読者に求められるのはハウダニット。
というか殺害方法と殺害現場も提示されているので、石神がどうやって隠蔽しようとしたかの謎解き。
天才vs天才って設定に弱いですね。クラクラしてきます。

映画化も控えているので詳しく書けませんが、これは面白いですよ。
って言うか、展開的には地味な話なので映画化も非常に気になりますね。
TVドラマ版最終回のレッド・マーキュリーのようなトンデモ展開になりそうな要素は有りませんが、そんな飛び道具を追加してくるかも。
# 残念な結果にならなければ良いですが
映画化の際は、原作に忠実に丁寧に作っていただきたい。

ゾラ・一撃・さようなら

ゾラ・一撃・さようならゾラ・一撃・さようなら
 著者:森博嗣

愛する人を、私は殺せるだろうか。
できる。
それは・・・・・・・、
愛するからこそ、できる。
これが、愛するという形だから。
私の形だから。

志木真智子からの依頼で、元都知事の法輪精治郎から美術品「天使の演習」を取り戻して欲しいと依頼を受けた探偵頸城悦夫。
一方、法輪精治郎はゾラと言う殺し屋に命を狙われている。

夏のレプリカに登場した盲目の詩人「簑沢素生」や、魔剣天翔などのVシリーズに登場した宝剣「天使の演習(エンジェル・マヌーバ)」が登場することからもわかるとおり、S&Mシリーズ・Vシリーズの外伝的作品。
ちょっとハードボイルド、ちょっとミステリ、ちょっとロマンスの中途半端感がぬぐえない。
オシャレな会話とVシリーズやS&Mシリーズの雰囲気が楽しみたければ読んでみても良いが、森博嗣ファン以外には勧められないかも。

十角館の殺人

十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫 あ 52-14)十角館の殺人 新装改訂版
 著者:綾辻行人

「僕にとってミステリとは、あくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説と言う形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理のゲーム。
それ以上でも以下でも無い。

大分県のS半島J崎の沖合い5kmの海上に浮かぶ孤島・角島。
その島に建つ十角形の奇妙な館<十角館>を訪れたK大学ミステリ研の7人。
半年前、角島に青屋敷と十角館を建て、暮らしていた建築家・中村青司と家族は、青屋敷とともに焼死していた。
青屋敷の事件とリンクするかのように殺害されていく学生達。
ミステリ研の学生達は犯人を特定することができるのか?

20年前に発売され、新本格ブームを巻き起こした綾辻行人の「十角館の殺人」の新装改訂版です。
本土との連絡手段を絶たれた孤島と、本土での同時進行で進む事件。
半年前に惨劇が起こった孤島を舞台に犯行を行わなければならなかった犯人の動機とトリック。
さすが、新本格ムーヴメントを起こした作品だけありますね。

本格好きは、一度は読んでおきたい一作。

タカイ×タカイ

タカイ×タカイ (講談社ノベルス モF- 41)タカイ×タカイ
 著者:森博嗣

「鈍感だから、周りを気にせずに、その分よけいな事を考える暇があったんですね。だから脳が発達したんだ。」
「君を見ていると、特にそれを感じるわよ」

有名マジシャン・牧村亜佐美の自宅敷地内のポールに掲げられた他殺死体。
地上15メートルのポールの頂上部に掲げられていた被害者は、牧村のマネージャだった。
なぜ、どうやって、彼はそんなところに掲げられねばならなかったのか?

Xシリーズ第3作目は、不可解なところで発見された他殺死体のお話。
我らが西之園嬢も、探偵役もかってでるくらい積極的に絡んできます。

椙田さんと西之園嬢の関係や、西之園嬢が公安とともに追う事件の話もでてきて、ますます目が離せないシリーズになりましたね。
同時進行のGシリーズも気になるところ。

探偵ガリレオ

探偵ガリレオ (文春文庫)探偵ガリレオ
 著者:東野圭吾

「故障中、という言葉はあるのかな
故障、だけで意味は通るはずだが」

突然燃え上がる若者の頭、アルミ板に転写されたデスマスク、不可解な心臓麻痺、海中での大爆発、幽体離脱した少年の証言など次々と起こるオカルト現象。
それら難事件を科学で解明する若き物理学者湯川助教授と、その友人草薙刑事の掛け合いが楽しい本格ミステリ短編集。

福山雅治・柴咲コウ主演のドラマガリレオの原作。
ドラマが面白かったので、ヨメが図書館から借りてきた原作を読みました。
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キラレ×キラレ

キラレ×キラレ (講談社ノベルス (モF-39))キラレ×キラレ
 著者:森 博嗣

「少なくとも、僕の仕事は、僕に仕事を頼んだ人を納得させることなんだ。
足を運んで、時間をかけて、汗を流しても、結局はわからなかった。
だけど、とりあえずは、なにもしなかったよりは、
努力をした分、しかたがない、という納得が得られる、というわけだね。

満員電車で連続して起きる切り裂き事件。
被害者の共通点は、若くない女性(真鍋 談)ということ以外は見当たらない。
冤罪を被りそうになったことに腹を立てた建設会社重役から、依頼を受けて調査をすることになった"探偵"鷹知と、彼にアシストを依頼された椙田事務所の小川・真鍋は、犯人の正体を探し当てることができるか?

と言うわけで、Xシリーズ第2弾です。
終盤には、我らが西之園嬢も登場。
っていうか、このシリーズにも関わってきそうな勢いを見せてます。
まだ終了していないGシリーズも気になりますが、こちらも目が離せませんね。

前巷説百物語

前巷説百物語 (怪BOOKS)前巷説百物語
 著者:京極夏彦

「泣き乍ら帳尻合わせるばかりが人の道じゃねえ。
騙して賺して謀って、夢ェ見させてやることだって出来るじゃねェか。
神や仏ってな、その夢なんだろが。神も仏もねェ世なら、化物でも何でも構いやしねェ。
所詮この世は嘘ッ八だ。嘘と承知で収められねェものかよゥ。

小股潜りの又市が御行になる前、御燈の小右衛門や山猫廻しのおぎんと組んで仕事を始める前の駆け出しの頃のお話。
荒唐無稽な大仕掛けを仕掛ける「寝肥」や「周防大蟆」、御燈の小右衛門との出会いを描いた「かみなり」など前三作とは違った趣。
青臭い又市が、時に失敗をしながらも成長していくさまは読んでいて楽しい。
駆け出しの頃の話なので、前三作のような凝りに凝った大仕掛けは無いが、これはこれで楽しいです。

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