西巷説百物語
著者:京極夏彦
「これで終いの金比羅さんや」
巷説百物語、前巷説百物語に連なるシリーズ。
舞台は関西、主人公は今までのシリーズの又市ではなく、靄舟の林蔵。
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新・垂里冴子のお見合いと推理
著者:山口雅也
「ー ヒントですか・・・・・・じゃあ、«神は寝ている猿なり»とでも」
お見合いをすると必ず事件に巻き込まれる悲運の和装美人、垂里冴子姉さんの新作短編集。
ついに人間以外の相手とお見合いをしてしまった第一部「見合い相手は水も滴る○×△?」
日本殺人事件の主人公、東京茶夢との奇跡のコラボを果たした第二部「神は寝ている猿なり」を収録。
お見合い時に発生した事件を、流されるままに解決していった感のあった冴子姉さんが、積極的に事件に関与して解決していくさまが楽しい。
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ステーションの奥の奥 (ミステリーランド)
著者:山口雅也
「うん。ぼくはこれから、ここへ吸血鬼を呼び出してみようと思うんだよ。」
小学6年生の陽太は東京駅が全面改築されることを知り、東京駅を探検して夏休みの自由研究にしようとする。
東京駅を探検するため、夜之介おじさんとともに東京駅の「東京ステーション・ホテル」に向かう。
そこで、彼らが遭遇した奇妙な事件。
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くらのかみ (ミステリーランド)
著者:小野不由美
「座敷童子がいい妖怪だって言われるのは、だからなんだね。お金持ちになるのはいいことだから、それを連れてきてくれる妖怪は、いい妖怪なんだ。」
「へえ?」と、想一はちょっと、いたずらでもたくらむような顔をした。「お金持ちになるのは、いいことなのかい?するとうちは、お金持ちじゃないから、いい状態じゃないんだな。」
講談社の子供向けミステリシリーズ「ミステリランド」の第1回配本の中の1冊です。
ミステリランドは、この本の他は森博嗣の「探偵伯爵と僕」を購入済み。
「探偵伯爵と僕」もそうなんですが、子供向けとは言え、なかなかに丁寧なミステリで、いっさい手抜きはありません。
5人しかいなかったはずの子供たちにまじった座敷童子、しかしどの子が座敷童子かは誰にも分からない。
そんななかで起こる旧家の後継者争いと、それに関連するかのような後継者候補に襲いかかる不可解な事故。
しかも座敷童子の招待が、メイントリックにも関連してくる解決篇はなかなかに爽快です。
子供だけでなく、ミステリ好きだったかつての少年少女にもオススメの1冊です。
工学部・水柿助教授の解脱
著者:森 博嗣
諸君、読みたまえ。
これが小説だ。
パスカルが、あまりにも可愛くて水柿君と須磨子さんが親バカだったり。
掃除機はカッコ良いけど、実用的だから趣味の領域に入り込まなかったり。
水柿君が引退宣言をしたらインタビュアが泣いて、須磨子さんが勘ぐったりしながら繰り広げられる日常生活。
#アレ、タイトルは「離脱」の筈じゃなかったっけ?
どんどんミステリのイメージから離れていくこのシリーズ。
取り留めの無い文章が紡ぎだす独特の浮遊感を素直に楽しみましょう。
同作者の小説では「スカイ・クロラ」シリーズに次いで好きなシリーズ。
万人にオススメはできません。
黒猫館の殺人
著者:綾辻 行人
「いいねえ、北海道は」
「梅雨が無いのも台風が来ないのも確かにいいけどね、問題の核心はなによりもまず、あいつらがいないことだ」
「あいつら?何ですか、それ」
「ゴキブリに決まってるだろう」
ホテル火災に巻き込まれ、記憶をなくした男。
彼が火災現場から持ち出した手記には、中村青児の設計した館"黒猫館"で起こった事件が綴られていた。
鹿谷は、どこにあるとも知れない黒猫館を探し、彼の記憶を取り戻すことができるのか?
館シリーズ6作目。トリックのスケールは大きいけど…うーん。
はじめにトリックありきで物語を作った感満点ですね。
叙述トリックと言うよりは間違い探し感の高い小ネタ満載です。
時計館の殺人
著者:綾辻 行人
「"現実"という名の巨大幻想を造り出し、これを確かな基本として万人に認めさせ、信じさせるような圧力を加え続けることが、この社会と言うものの最大の役割なんだと思う。そうすることによって初めて、人々に安定が供給されるわけだ。」
鎌倉の郊外に立つ時計館。その館は当時の当主がコレクションした108もの時計で埋め尽くされている。
幽霊が現れるという噂があるその館に取材のために訪れた雑誌「CHAOS」の編集者と霊能力者、W****大の超常現象研究会(ミステリ研)のメンバ達。
10年前に時計館で起こった痛ましい事故と、彼らを襲う連続殺人との関係とは?
館シリーズ5作目。場を支配する大掛かりなメイントリックを擁する閉ざされた館モノ。
事件が起こっている館内と、事件を知らずに他の謎を追っている館外の探偵役。
構図は氏のデビュー作「十角館の殺人」と全く同じですね。
解決後、真相がひっくりかえる所は流石ですが…
人形館の殺人
著者:綾辻 行人
「あれから何度も思い出そうとしてみたんですけどね、どうしても、うまく見えてこないんです。遠すぎて手が届かない—それに何か、形の違う破片がたくさん混ざりこんだパズルみたいな感じで・・・。」
飛龍想一が亡くなった父から相続した京都の邸「人形館」。
近所では子供を対象にした通り魔殺人が横行し、邸の中には父の残したマネキンが…
そして、想一の近辺にも彼を狙う正体不明の殺人者が現れる。
館シリーズの4作目。
館シリーズを3作目まで読み続けてきた中で、これが一番面白かったです。
メイントリックと犯人は、ある程度早い段階で分かってしまいますが、それでもなお面白い。
ラストのカタルシスは一番ではないでしょうか?
今までの館シリーズとは、かなり異色な作品ですが、これは良いですよ。
ただし、他の館シリーズを読まずに、いきなりコレを読むとカタルシスが少ないので、注意が必要。